馬瀬村森林山村活性化研究会の村づくりの調査研究

平成6年

旧馬瀬村が「森林山村活性化先端モデル事業」のモデル地域に指定され、山村活性化のモデル構想を作成することとなった。村では、大内晃岐阜大学名誉教授を顧問とし、岐阜県、各種団体、住民代表、コンサルタント会社からなる「馬瀬森林山村活性化研究会」を組織し、平成8年まで現状分析、活性化のための具体的事業の検討など調査研究を行った。

平成8年3月

研究結果に基づき、「馬瀬川エコリバーシステムによる清流文化創造の村づくり構想」を策定した。 この構想では、村の森林、川、農耕地などの自然資源、景観、文化財、特産品、人材などあらゆる資源の再発見と活用について検討を行った。その結果、馬瀬村は馬瀬川の流域で森、川、農耕地、人が川を中心に有機的に結びつき、ひとつのまとまった自然生態系を形成している特徴があり、これを「馬瀬川エコリバーシステム」と呼ぶことにした。このエコリバーシステムは、村の長い歴史の中で形成され、それが破壊されないできたため、今日、住民にとって自然豊かで住みやすい環境を与えてくれているとともに村を訪れる観光客には、美しい景観、清流など魅力ある地域となっている。 しかし、このエコリバーシステムの持つ機能、価値、恵みは、住民にはあまりにも日常的で身近すぎてその重要性に気付きにくく、また、近年、農業後継者の不足による農林地の管理能力の低下などその維持にも問題点が多く存在している。更に、自然を大切にすることへの関心が薄い観光客の増加など、馬瀬村の豊かな自然環境が今後、永続的に良好に維持できるかどうかは疑問である。一方、村の今後の発展、活性化のためには、経済基盤の強化が求められ、従来の農林業のほかに、観光客の増加、都市との交流が不可欠となっている。これらを総合して馬瀬村の今後の持続ある発展を考えると、村の特徴を活かし、馬瀬川の水量の確保、水質の改善、動植物の保護、森林や農地の適正管理、山村景観の保全など馬瀬川を中心として流域の自然環境を総合的に保全する「馬瀬川エコリバーシステム」の機能を強固することが必要である。

馬瀬川エコリバーシステムによる清流文化創造の村づくり

平成8~16年

そこで清流・馬瀬川を中心に、森や川、農耕地、人などを結び付け、自然環境を保全しつ、各種資源の潜在的な魅力・活力を引き出すとともにそれに磨きを掛けることで地域の活性化につなげる各種の事業を6つのプロジェクトに体系化し実施して行くこととなった。実施する個々の事業は、観光客には評価が高い馬瀬村の美しい山村景観などの資源の隠れた魅力、潜在活力を引き出すことに力を注ぐことにした。特に大掛かりなハード事業は避け、ソフト事業を中心に「小さな仕掛けで息長く」をモットーに継続して実施することに心がけた。

実施した6つのプロジェクト

  • 美しい山村景観を保全するプロジェクト
  • 川と人のふれあいを深めるプロジェクト
  • 森と人とのふれあいを深めるプロジェクト
  • 清流および森林の環境保全プロジェクト
  • 農と人とのふれあいを深めるプロジェクト
  • 山村の情報を受発信するプロジェクト

町村合併を控えて馬瀬地域の活性化として「馬瀬地方自然公園」の検討

平成15〜16年

平成14年頃から益田郡5町村の合併問題が浮上し、合併によりこれまでの地域づくりの継続性が失われかねないこと、地域の伝統文化や特色が薄れること、住民の地域づくりに対する関心が低下するなどが懸念された。そこで馬瀬村では、特色ある地域づくりに一定の成果を収めてきた「馬瀬川エコリバーシステムによる清流文化創造の村づくり」を今後も継続することとし、具体的には村の全域を「馬瀬地方自然公園」と呼称し、住民が地域づくりの事業に参加・協働する指針(合言葉)として「馬瀬地方自然公園・住民憲章」を定めることとした。この地方自然公園は、フランスの小さな山村で住民が主役となって観光と産業(農林業を両立させ)等、地域の経済的発展を図って成功しており、平成9年から13年の5年間、延べ20人の馬瀬住民による「フランス山村調査隊」の調査結果を基に、「地方自然公園制度」の仕組みをモデルとして馬瀬村に応用するものである。

「馬瀬地方自然公園」の検討

平成15年12月26日村の施策として、要綱を制定し明確化した。
「馬瀬地方自然公園及び住民憲章を定める要綱」(訓令6号)
「馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会設置要綱」(訓令7号)
平成16年1月20日馬瀬村議会が岐阜県知事に対して村政状況報告し、「馬瀬地方自然公園」の取り組みを説明、知事より岐阜県山岡町のNPO法人の活動事例を受けた。
平成16年2月25日馬瀬村閉村式において、今後の馬瀬地域の地域づくりのため「馬瀬地方自然公園」を推進することとして、林年宏区長会長が「馬瀬地方自然公園」の設立宣言を行った。

「馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会」の設立の動き

平成16〜17年

馬瀬地方自然公園の具体化するためには、行政と住民が協働で推進する組織が必要であり「馬瀬地方自然公園推進協議会」を立ち上げる準備を進めてきた。

平成16年7月23日第1回「馬瀬地方自然公園研究会」を開催(30名参加)
推進組織について討議。
平成16年10月13日「馬瀬地方自然公園ガヤガヤ会議」開催(23名参加)
自然公園について様々な意見が交換された。
平成17年3月24日講演会開催 「地域資源の活用と運営体制」について(20名参加)
洞口健児アウトドアコーディネーター。
平成17年3月25日「馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会」設立準備会開催(21名参加)
協議会の早期設立を望む声が出され、平成17年度に馬瀬振興事務所管理課で立ち上げ準備の検討を開始した。
平成17年8月2日「馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会」設立総会開催(18名参加)
馬瀬地域の八つの資源(地域の宝)について「住民憲章」を定めて保全・利用を図り、地域の活性化を行うことを目標とし、
この住民憲章のPRや、自然公園に関する提案、実践活動を行い、地域住民が自主・自立の気構えで行政と協働して行う地域づくりを目指す。

「馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会」の取り組み及び解散

平成17~20年

平成17年馬瀬の魅力再発見調査の実施
馬瀬地方自然公園づくり3ヵ年計画(平成18~20年)の策定
平成18~20年馬瀬地方自然公園みどころマップの作成
山村景観ポイント(10箇所)の選定、看板設置
保存樹(巨木)の指定
エントランス看板の設置(3箇所)
美輝の里おさんぽコースの設定
川上キャンプ場の景観改善(トイレ、看板の整備)
美輝の里おさんぽコース、案内人テキストの作成
平成19年10月4日NPO「日本で最も美しい村連合」への加盟
平成20年馬瀬地方自然公園づくり5ヵ年計画(平成21~25年)の策定
馬瀬地方自然公園・住民憲章推進協議会が中心となり、地域の各種団体(10団体)の代表からなる「馬瀬地方自然公園づくり委員会」を組織した。
県のまちづくり支援チームの派遣と助言を受けて、地域の更なる安定的発展をめざして自然や景観を守りつつ、人の賑わいと経済循環が生まれる仕組みづくりを検討し作成した。
また、今後地域づくりを進めていく団体を統一し協議会を解散した。

「馬瀬地方自然公園づくり委員会」の設立及び今後の取り組み

平成21〜25年

平成21年馬瀬地方自然公園づくり委員会の設立
美しい馬瀬を守り、安心して住み続けることができる元気な地域づくりを目的に発足した。
また今後の馬瀬地方自然公園づくりは、豊かな自然や美しい景観を守りながら、都市との交流の拡大、観光事業や農林業の振興、特産品づくり、馬瀬の魅力の情報発信に努力していく。
・資源を活かした特産品づくりとそのブランド化
・魅力を体感できるウォーキングコースの活用
・生きた情報発信とその体制づくり
・鮎のPR、特産品化に着手(釣りから食へ)
・馬瀬地方自然公園ホームページの開設
平成22年・NPO「日本で最も美しい村」連合主催の第2回「戦略会議」を馬瀬地域で開催(平成22年6月3日)
平成23年・特産品部会で検討の「手作りジャム」をさんまぜ工房が完成(平成23年7月21日)
・馬瀬川上流漁業組合に大型冷蔵庫を設置し、鮎の買い入れを開始(平成23年7月)
・下呂市景観審議会が馬瀬地域を「下呂市景観推進地区」に指定(平成24年2月24日)
平成24年・下呂市長が当協議会を馬瀬地域景観推進地区協議会に認定(平成24年6月19日)
・農林水産省交付金を利用し、「馬瀬川の火ぶり漁」を観光公開しツアー商品として開発
・馬瀬全域をカバーするウォーキングコース完成(平成21年度から11コース、64km)
・馬瀬地方自然公園のロゴマーク、キャラクターを制定(平成25年3月)
 ロゴ入り缶バッジ、手ぬぐい、シールを作成し配布開始
・下呂市長が当協議会作成の「馬瀬地区景観推進地区計画」を認定(平成25年1月21日)
平成25年・馬瀬川上流漁業協同組合の鮎の買い取り、流通が安定軌道に乗る
・第1回清流の里健康ウォーク大会を南部コースで開催(平成25年10月27,28日)
・「馬瀬里山ミュージアム」(西村地区)設立に向け基礎調査の実施(平成26年3月報告会)

平成26〜30年

平成26年・農林水産省の「都市と農村共生・対流総合対策交付金」を利用、各種事業に着手(平成26~28年度)
・馬瀬里山ミュージアム(西村地区)を設立し、里巡りツアー等を開始(平成26年5月22日)
・馬瀬地方自然公園設立10周年記念行事「馬瀬の集い」を開催(平成27年2月22日)
・当協議会が受け皿となり地域おこし協力隊員 1名採用  
平成27年・農林水産省交付金を利用した各種事業を本格的に実施 
・農産物等のブランド化を図るため、馬瀬地域産品認定制度の創設(平成27年4月1日)
  認定を証するラベル「馬瀬の恵み」を作成し商品に貼付開始 
  第1回認定 馬瀬川上流鮎(平27.7.13)、水源米馬瀬ひかり(28.1,15)
・グリーンツーリズム商品を本格的に造成  火ぶり漁、里山紅葉ウォーキング
・観光地域づくり事業体(DMC)の検討会議開始 (平成26~27年度 26回)
・星城大学、益田清風高校、サンマゼ工房、当協議会で連携し新たな特産品づくり開始
・内閣府が第2回「ディスカバー農山漁村の宝」に当協議会を認定(平成27年10月29日)
平成28年・馬瀬里山ミュージアム(中切地区)の基礎調査を実施、(平成29年3月 報告書提出)
・農林水産省創設の「食と農の景勝地」に馬瀬地域が認定される(平成28年11月1日)。
  食と農の景勝地全国協議会(SAVORJAPAN)に加盟し、海外への情報発信、インバウンド客の誘致を開始
・日本で最も美しい村連合主催写真コンテストで「馬瀬川の花火大会」が最優勝賞を受賞
・星城大学、益田清風高校による高大連携により「馬瀬味噌」のブランド化検討会開催
・地域おこし協力隊員1名採用(平成28年4月1日)
平成29年・農林水産省交付金「農泊推進費」による農泊の取り組みを開始(平成29~30年度)
 下記3つのテーマで事業を実施した。
  ①食を活かした滞在創造 
   日本で最も美しい村プレミアランチ、同ディナーの開発 
  ②景観を活かした滞在創造
   電動バイクを利用したバイクツアーの開発(4コース)
  ③インバウンド体制づくりとy
   馬瀬地域におけるインバウンドビジネスの可能性を先進企業に調査委託し検討
・地域おこし協力隊員1名採用(平成29年4月1日)
・西村地区に花の名所づくりとして水仙球根6、000球植栽(平成29年10月18日)
・馬瀬地域産品に新たに麦味噌、ほう葉寿司など4品目を認定(平成30年2月19日)
・馬瀬里山ミュージアム (川上地区)の基礎調査 報告書完成(平成30年3月)
・「日本で最も美しい村」連合加盟10周年記念「馬瀬の集い」 (平成30年2月25日)
・下呂市の観光について旧5町村の枠を超えた広域連携が本格的に開始される。
 下呂市DMO推進委員会の審議に平成28年7月から参加
 下呂市観光協会が日本版DMOに正式登録される(平成29年11月29日)
・下呂市エコツーリズム推進協議会に平成28年9月から参加
 下呂市エコツーリズム全体構想策が国から承認を受ける(平成30年4月6日)
平成30年農泊推進費による農泊の取り組み、2年度目の予定事業を実施、年度末までに完了
 
・馬瀬里山ミュージアム(中切地区)のウォーキングマップ「馬瀬の原風景を訪ねる」作成
・馬瀬地域景観パトロールの実施(平成30年7月13日)
・「日本で最も美しい村」連合の学習会を馬瀬地域で開催(平成30年10月18~19日)
・馬瀬川の環境保全、馬瀬川の上流鮎のブランド化のため、地域おこし協力隊員1名採用

令和元年〜現在

令和元年・関係人口確保の取り組みに着手した。
・「食と農の景勝地」5か年計画の4年目に入り、地域おこし協力隊員がインバウンド向けバイクツアーの実施に努力し、KPIの日帰り目標人数500名誘致を1年早く達成
・馬瀬地域産品に認定済みの8品目を令和元年度中に再認定し認定制度が軌道に乗る。
・「第21回米・食味分析・鑑定コンクール国際大会木更津大会」(令和元年12月1日)
・馬瀬ひかり生産組合の川口太三氏 金賞受賞 
・日本で最も美しい村連合パスポート事業に参加(ホテル美輝の里、株式会社さとやま、フィッシングセンター水辺の館)
・下呂市エコツーリズム推進協議会との連携事業 ワンコイントリップ2回開催(7月、9月)
令和2年・日本で最も美しい村連合主唱の「最も美しい村の日」を全国一斉に毎年10月4日に制定し、振興事務所で連合旗の掲揚、地域全域の景観パトロールを行い古い標識の回収(15名参加)
・全国エコツーリズム大会in下呂市開催(令和2年11月15~16日)
 下呂の宝発表(馬瀬地域の資源)、エコツアープラン(里山ミュージアム西村の里巡り)
・観光協会主催「あったか祭り」に協賛、美輝の里ウオーキングガイドに参加
 11月1,8,22,29日の4日間、約2、000名参加
・第22回米・食味分析鑑定コンクール:国際大会in富士山(令和2年11月29日)
 馬瀬ひかり生産組合の大前秀之氏が国際総合部門で金賞、同じ空二村富貴夫が特別優秀賞を受賞、小学校部門で下呂市立馬瀬小学校が3度目の金賞を受賞
・西村地区の里山ミュージアム活性化のため、旧森林公園の活用を検討
 岐阜県立森林文化アカデミーに調査を委託し調査報告書作成(令和3年3月)